心のつながりと発達

子どもとの信頼関係を築くための「安全基地」の作り方

こんにちは!

前回の記事では、私たちのチームの紹介とこのブログの目的についてお話ししました。今回はさらに一歩進んで、子どもとの信頼関係を築くための具体的な方法についてお話ししたいと思います。今回は、「子どもとの信頼関係を築くために大切な『安全基地』」をテーマに、具体的な方法を紹介していきます。

子どもが安心して成長できる環境を整えることは、子育てにおいてとても大切です。特に保護者の皆さんや教育に関わる方々にとって、子どもにとっての『安全基地』を理解し、それを実現することが、子どもの健やかな発達に大きく貢献します。子どもたちがどのように安心感を得て、自分の世界を広げていけるのかを理解することで、より良いサポートが可能になります。一緒に子どもの健全な発達を支える環境づくりを考えていきましょう。

「安全基地」とは、子どもが不安や恐れを感じたときに安心して戻ることができる場所や人を意味します。この考え方は、心理学者のジョン・ボウルビィが提唱した愛着理論に基づいており、子どもが自分の感情を自由に表現し、「自分は守られているんだ」と感じられる環境が整っていることが非常に大切です。これによって、子どもは自分に自信を持ち、外の世界にチャレンジする力を育むことができます。

保護者や教育者が「安全基地」としての役割を果たすことで、子どもは新しいことに挑戦する勇気を持つことができます。例えば、新しい友達を作ることや、初めての場所に行くときなど、日々の中で直面するさまざまな挑戦において、子どもが「失敗しても、ここに戻れば大丈夫」と感じられる環境を提供することが大切です。

「安全基地」があることで、子どもが困難に直面した際に一度立ち止まって自分を振り返り、その後で次に進むための力を取り戻すことができます。例えば、学校で友達とトラブルがあったときや、スポーツの試合で負けたときなど、一時的に落ち込むことがあっても、安心して戻れる場所があれば、気持ちをリセットし再び前向きに取り組むことができます。このように、「安全基地」は子どものレジリエンス(回復力)を育むうえでも非常に重要な役割を果たします。

さらに、子どもとの信頼関係を築くためには、日々のコミュニケーションが非常に大切です。日常の中で子どもが感じていることや考えていることに耳を傾けることで、子どもは「自分の気持ちが理解されている」と感じます。この「理解されている」という感覚は、子どもにとって非常に大きな安心感を与え、それによって自己肯定感を高め、困難に立ち向かう力を育てます。

それでは、「安全基地」がどのように愛着形成に寄与するのか、そしてその役割をどのように日常生活に反映させることができるのか、それぞれを詳しく見ていきたいと思います。

安全基地とは何か?

「安全基地」とは、子どもが「ここなら安心していられる」「失敗しても大丈夫」と感じる場所や人のことを指します。この概念は愛着理論に基づいており、子どもが自分の感情や経験を安心して表現できる環境が整っていることで、自信を持って外の世界へチャレンジする力が育まれます。保護者や教育者が「安全基地」として子どもを支えることで、子どもは安心して新しいことに挑戦する勇気を持つことができます。

安全基地と愛着形成の役割

愛着形成において、子どもを支える「安全基地」には重要な役割があります。子どもが安心して環境を探索し、新しい経験を積むことをサポートする拠点となることで、健全な発達に寄与します。「安全基地」は子どもが恐怖や不安を感じたときに戻る場所であり、探索行動を支える役割も果たしています。

  1. 安全基地機能
    • 安全基地機能は、子どもが恐怖や不安を感じたときに安心して戻ることができる存在です。子どもは未知のことに挑戦するとき、不安になったときに、安全基地としての親や教師のもとに戻ることで気持ちを安定させます。このように、安心して戻る場所があることが、子どもにとっての心理的な安全網となります。
  2. 探索基地機能
    • 探索基地機能は、子どもが新しい環境や経験に挑戦する際に、その基盤としての役割を果たします。子どもは安全基地から出発し、未知の世界を探索することを通して成長していきます。この過程で親や教師は、子どもが新しいことにチャレンジする勇気を持てるよう後押しし、探索が終わった後に戻ってきたとき、その経験を共有することで安心感を提供します。例えば、公園で新しい遊具に挑戦する際に「楽しんでおいで!」と声をかけ、戻ってきたら「どうだった?面白かった?」と興味を持って話を聞くことが、探索基地機能を支える具体例となります。

安全基地を作るための具体的な行動

では、具体的にどうすれば子どもにとっての「安全基地」を作れるのでしょうか?ここでは、いくつかの具体的な行動を紹介します。

  1. 共感を示す
    • 子どもが不安や悩みを抱えているとき、まずはその気持ちを理解し共感することが大切です。「そうなんだ、それは辛かったね」「大変だったね」といった共感の言葉を使い、子どもが感じていることに寄り添います。共感を示すことで、子どもは自分の気持ちを受け入れてもらえていると感じ、安心感を得られます。
  2. 失敗を肯定する
    • 子どもは挑戦する中でたくさん失敗を経験します。そんなとき、「失敗しても大丈夫だよ」と声をかけ、失敗を責めずに肯定的に捉えることで、子どもは「失敗してもここに戻れば大丈夫」という安心感を持つことができます。例えば、スポーツでミスをしたときや、勉強でうまくいかなかったときに、「そのチャレンジをしたことがすごいよ」と伝えましょう。
  3. 一貫性のある対応をする
    • 子どもは一貫性のある行動を通して安心感を得ます。今日は叱られたことが明日は許される、というような対応のブレがあると、子どもは混乱してしまいます。保護者や教師として、同じ状況に対して同じ対応をするよう心がけることで、子どもは安心して自分の行動を決定することができます。

日常生活での安全基地作りのヒント

「安全基地」を作るためには、日々の生活の中で小さな工夫を積み重ねることが大切です。例えば、子どもが学校から帰ってきたら「今日どうだった?」と話を聞く時間を作りましょう。その時間が子どもにとって「安心して自分の気持ちを話せる時間」になれば、それが日常生活における安全基地の一部となります。また、忙しいときでも子どもが話しかけてきたら、一度手を止めてしっかり目を見て聞いてあげることが大切です。

愛着形成において「安全基地」はとても重要な役割を果たします。特に、小さなお子さんの場合、自分の気持ちをどう表現すればいいのかが分からないこともあります。そのようなときは、子どもが感じている気持ちを言葉にしてあげることが大切です。「今ちょっと怖かったかな?」「楽しかったんだね」と、子どもの気持ちを代弁してあげることで、子どもは自分の感情を理解し、安心して表現できるようになります。

また、「安全基地」が探索行動をサポートするために、子どもが新しいことに挑戦する際に前向きなサポートを心がけることも大切です。例えば、公園で新しい遊具に挑戦しようとする子どもに「楽しんでおいで!」と背中を押し、戻ってきたら「どうだった?面白かった?」と興味を持って話を聞くことで、子どもの自信を育てることができます。

最後に

「安全基地」を作ることで、子どもたちは安心して成長し、様々なことにチャレンジする力を育むことができます。皆さんも、子どものための安全基地を作るために、小さな工夫を日常生活の中に取り入れてみてください。

これからも一緒に、子どもたちの笑顔が増える環境を作っていきましょう!


  1. John Bowlby (1988). A Secure Base: Parent-Child Attachment and Healthy Human Development.
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